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                  受講生との対談のページ(U) 2005年      
 
 
2002年4月に開設いたしました「さわやかカウンセリング」はすべて電話でさせていただいております。このように受講生と直接お会いしてお話しを伺うことができますことは大きな喜びです。
 

村岡 正さん(仮名)(東京都在住 46歳 会計事務所長 男性)
「吃音の改善は無理なく自然にというのが一番いいです。」
                     対談日:2005年12月23日
灰谷 淳さん(仮名)(東京都在住 31歳 会社員 男性)
「この3年間で勘所をつかんだかなという感じかなと思います。」

                     対談日:2005年12月23日
三浦孝幸さん(仮名)(千葉県在住 28歳 会社員)
プラス思考にもっていきたいですね。」
                     対談日:2005年2月27日
飯田真一さん(仮名)(千葉県在住 高校2年 17歳)
「自然体が一番いいですね。」
                     対談日:2005年2月27日

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            吃音の改善は無理なく自然にというのが一番いいです。  
 


 村岡 正さん(仮名)は東京に会計事務所を設け、企業に赴いての会計、税務、財務など経営全般に関する専門家として多くの企業に関わり、経営者セミナー、企業研修の講師などスピーチの機会の多い仕事に就いておられます。
 村岡さんの体験談は2005年5月12日付けの「吃音と上手く付き合う」(Mさん 東京都在住 46歳 会計事務所所長 男性)として掲載しております。


【江田】 このたびは村岡さんの事務所で直接お話しを伺うことができ、とても嬉しいです。村岡さんとの電話でのレッスンではよくご自身の心の世界のことをお話しさせていただいていますが、ここでも村岡さんの体験をぜひお聞かせください。


【村岡】 今まで私は吃音に悩んでいろいろな療法を試してきました。20数年前、大学の予備校に通うために上京してから今日まで暇がないくらい(笑)。本人にとっては笑い事ではないんですけど・・・。最近(2005年10月から)では、森田療法を行っている心療クリニックに通っています。

 自分は吃音で自由に話せないという恐怖感が強くなってきて、いろいろ調べているうちに自分が強迫神経症という症状ではないかと思い当たるところがあって、インターネットで森田療法が効果があるという記事が目に留まりました。
 たまたま事務所の近くに森田療法を行っている心療内科のクリニックがありましたので、どんなものかと思って、実際にカウンセリングを受けて先生に私の悩み、吃音や発声不安のことを話してみました。
 すると、「あなたの場合、典型的な神経症のようですね。発声器官や話し方などの問題ではなく、不安症や神経症といわれる心理領域の問題と思われます。森田療法によれば、こうした問題は誰しも持っている心的要素ですが、特にこのこだわりが強くなると、固着といって、ひとつのことへのこだわりが普通以上に強くなって今の不安意識を形成して、それが体の行動に影響を及ぼしていると考えています。あなたは神経症と思われるので必ず治りますよ。」と先生に言われました。

 その先生から森田療法のことを理解し、まず自分自身の状況を正しく知るために、森田療法に関する本を読むことを勧められて読み始めました。書かれていることは実際に納得いくことが多く、実際に森田療法を試してみようと思い、今、定期的にカウンセリングを受けていますが、完璧主義を捨て自分の不安などの感情を否定しないでそのまま受けとめていく、今の自分の現状をそのまま容認するなど、森田療法の基本スタンスはレッスンで江田先生のおっしゃることと全く同じだと思います。

【江田】 森田療法は実践的ですよね。私の吃音の改善も実践を通して得たことですので、共通点があり学ぶことが多くあります。吃音はすべて神経症と重なるということではありませんが、対人恐怖症と共通したところがあり、こだわり意識、囚われ意識が強く働くことは吃音と部分的に重なるようにも思います。

【村岡】 森田療法の前は催眠療法も試しました。節操がないのが取り柄なもので・・・(笑)。最近ではヒプノセラピーといわれる心理療法的なこともやりました。私が学んだのはアメリカの理論ですが、せっかくだからこの機会にヒプノセラピーの技術を学んで資格も取得したら仕事にも役立つかと思って、1年前にセラピストの養成専門スクールに7ヶ月通いました。

 30人くらいの方々と一緒に、臨床実習を含む授業を受けたのですが、私が参加したクラスでは生徒の半分以上が、パニック症候群や拒食症を経験したり、現在も何らかの心理的問題をもっていたりして、心の世界に興味をもっていました。実際にカウンセリング、私たちはセッションといっていましたけど、それを受けて症状が軽くなったことを経験した結果、今度は苦しんでいる人を助ける方に回ろうと思ってセラピストを志望した方々が多かったように思います。

 7ヶ月という短期間に相当多くの理論や技術を学んだんですけど、主として過去の自分と出会って向き合い、現在の問題のきっかけとなった出来事を確認していくため、自我が形成される頃までさかのぼっていく退行催眠を学びました。今の自分の記憶からは消えてしまった過去にさかのぼって、親や兄弟、友達などの関わり、確かにそんなこともあったかなあというような子供の時に年齢を戻って、そのときのままをリアルに再体験していくのです。まあ見方によっては不思議な世界なんですけど、このスクールの先生が催眠誘導の第一人者ともいわれている方で、私はあまり抵抗なく受け入れることができました。この体験は自分の自我の形成の時の環境を再体験できて、それなりに意味はあったのですが、実際、今の私の吃音意識を取り去ることはできませんでした。スクールの単位は一通りとれて、アメリカのしかるべき機関のヒプノカウンセラーの資格認定を受けたので、それだけでもまあ良かったかなあと・・・(笑)。
 
 また、かなり前の話ですが、大学生の頃は話し方教室の門を叩いたこともありました。当時、吃音意識が強く、話すことが嫌で嫌で仕方なかったので、少しでも度胸をつければいいかもしれない、話し方を学べばひょっとして吃音も快方していくのかと思ったのですが、もともと話すのがどうしても嫌だったので、そのうち通うこと自体が嫌になってしまい挫折しました。全期分納めた授業料が無駄になってしまった苦い思い出があります。

【江田 】いろいろと村岡さんなりに手がけてきたわけですね。


【村岡】 本当にいろいろやってきましたねー。さすがに「腹式バンド」というのには手を出しませんでしたけど(笑)。予備校時代から今日まで東京で何とかやってきましたが、親しい人には今までよく騙されずにやってきたねー、などと半分本気で言われます。実際は今までいろいろな人と出会って、いろいろな体験をしてたり、結構高い授業料も払ったりして、それなりに苦労は多かったのですけど・・・(苦笑)。
 
 話は戻りますけれど、吃音は小学生の頃からありました。中学・高校の時など順番に自己紹介する時など、死ぬほど嫌でした。今もその感情は残ってますが、今も当時も「どもり」とか「どもる」という言葉を聞いただけでも嫌悪感を感じました。授業でもいつ自分が当てられるかとハラハラして、授業に身が入りませんでした。
 とにかく話すことが嫌でしたから、当時から話す場面から逃げていました。けれど逃げてばかりいると解決しないんです。解決しないまま今に至り、総決算を迫られているみたい(笑)。特に今はいろいろな話す場面がありますから逃げても逃げ切れない。特に会計士という仕事をしていれば話すことが多くありますから、前向きにとらえていかないとどうにもなりません。

 私の場合は、このように江田先生と話していると全く問題ないのですが、緊張すると急にロックされたようにことばが上手く出てこなくなってしまうことがあるんです。電話でも詰まることがあって怖くて仕方がない時があります。話しそのものより、話すことそのものへのこだわりが強くなって、発声不安神経症的とでもいっていいと思っています。

【江田】そんな中、「さわやかカウンセリング」のホームページをご覧になった。

【村岡】 私の経験ですけど、世の中には吃音につけこむ連中がたくさんいるとように思いますが、初めて「さわやかカウンセリング」のホームページを見たとき、何かクリスチャンの系統かなという印象を持ちました。私はごく一般的な日本人で、宗教的には仏教や神道の系統なんですが、中学校と高校はカトリック系のミッションスクールに通っていました。

 江田先生のホームページを見ていると、人を助けるという感じが受け取れて、安心感がありますね。きっと何か哲学がおありなのだとかと思います。困っているから利用してやろうというのと、困っているから助けてあげましょうというのでは大変な違いですよね。
   先生のホームページは、先生ご自身が吃音を体験しているなというのが読んでわかります。私と同じように吃音で悩んでる皆さんにお伝えしたいのですが、私たちにとって自分が誰を相手に話し方のトレーニングを受けるかというのはとても大切だと思います。

【江田】 そのように受けとめていただき、嬉しいです。私は小学校の時と高校生のとき、2回も大金を払って都内の吃音矯正所に通いましたが、月謝が当時の父親の1ヶ月の給料に相当する額でした。親の犠牲が身にしみて感じました。けれど通ったものの、日常生活では吃音に苦しんでいました。今でもあの時高額なレッスン料をだまし取られたという感が否めないですね。

【村岡】 悟ったようなことを言って恐縮ですが、吃音の改善は人に頼ってはできないと確信します。人や道具や神がかり的に頼って直してもらおうと思ったら決して直るものではないと思っています。頼って直そうとするから、へんな療法士や療法所に 嵌まって的はずれなことをしちゃうんですよね。私もさまざまなことを経験してきましたから、嘘か本当かを見分けなければいけないと思います。

 吃音の改善は無理なく自然に生活の中で、というのが一番いいでみたいですね。江田先生の電話でのレッスンは生活の一部に定期的に組み込んで習慣としていけるのが私にとってとても都合がいい。習慣づけというか、日常生活に組み込んでいけるレッスン理想的と思っています。
 自分でわからなかったことや自分で思ったことを、客観的に教えてもらったり相談させていただるので、おかげさまで良い感覚を掴みつつあるんです。あとは普段に練習というか実践というか、やり続けて、少々詰まっても良しとする開き直りが大切かと思っています。

【江田】 村岡さんは自分の声をご存じですか?とても伸びがあって実に柔らかな話し方ですよ。こうやってお話ししていても、放送関係の方かと思われるほどとても聞きやすい話し方です。表面からでは吃音意識をお持ちであることは全くわからないです。この私ですらも・・・。

【村岡】 そうですか?まだ小学生の頃、テープレコーダーの自分の声を聞いたらそれがイヤで・・・。


【江田】 私もそうですが、録音された自分の声が好きという人はあまりいないと思いますよ。・・・(笑)

【村岡】 会議の時や人前で話すときなど、なんとなく吃音が来そうだなと思い始めると、だんだん口調が駆け足になってしまいます。速くなっていることに自分でも気がつかない。言葉がいっぺんに出口のところに殺到してべたっと貼り付いてしまって詰まっちゃうといった感じです。

【江田】 人前で話すとき、こころの中でもうひとりの自分が「おまえは話しが下手なのに、なぜ人前で話しているのか、場違いなことをしているぞ」と問いかけてくるものです。過去の失敗がいつも現在に立ちふさがっているという感じです。人前で話しているおまえはそれにふさわしくない。吃音を隠して話しているんだ、という内面の声があります。大切なことは過去は過去。決して吃音を隠しているのではないというとらえ方をしていくことが大切だと思います。
そんな気持ちだなあ〜とそのまま受けとめて、役者になって演じるのがいいですね。調節して話すとはそんなものですよ。
 吃音が表面に出ても出なくても、詰まり感覚を受けとめながら調節して話すことが当たり前という意識習慣を身につけていくことです。

【村岡】 そういえば、神経症の先生も江田先生と同じことをおっしゃっています。体験的に形成されたものは何か一つの真理を形作るように思います。今は少し開き直って、吃音であるが故に、通常の人が気づかない世界を気づかせてもらったり、反面的にはよかったかと思うこともあるんです。
 
 ところでレッスンの方法ですが、電話でのレッスンと平行して、実際に少人数でもいいのでひとつの場所に集まって話す練習をすると実践的で、一層効果があるのではないかと思うんですけどいかがでしょう。例えば社会人で同じ吃音の悩みを持つ者同士、いろいろな役職をもっている方がいらっしゃると思いますけれど、みんな集まって輪読会とかスピーチの練習などをするとか・・・。よろしければ、まず東京でそんなセッションを開催していただければぜひ参加したいと思います。賛同していただける方がいればぜひご紹介ください。

【江田】 いいですね。ぜひこれからの課題として前向きに検討していきたいです。

                                                     (対談日 2005年12月23日)
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 この3年間で勘所をつかんだという感じかなと思います。 
 
 灰谷 淳さん(東京都在住 31歳 男性 会社員)(本人のご希望により仮名)とのレッスンは、2003年の2月にスタートしています。今まで約3年間にわたり電話でのレッスンを受講しておられます。
 
【江田】 今まで3年間電話でのレッスンをさせていただいて、電話の声だけでしたのでここでお会いしてやっと声とお姿とが一致して嬉しい限りです。

【灰谷】 レッスンを始めた3年前はまだ僕が名古屋にいた時でしたからね。東京に上京して2年経ちますが、ここで江田先生とお会いできて嬉しいです。これも何かの巡り合わせでしょう。(笑)
 この3年間、僕が出来の良い受講生なのか、出来の悪い受講生なのかわかりませんが・・・。

【江田】 受講生の出来がよいとか悪いとかいう尺度は私には全くありませんよ。受講生ひとりひとりが改善の方向性を掴んでいただくことがすべてですから・・・どのレベルに到達するということは大切なことではありません。それぞれ立場も異なりますし、話し方に上限はないですからね。

【灰谷】 吃音を理解できる人とこのように直接会って話すことは生まれて初めての経験なんですよ。今までは吃音ということを絶対人に知られないようにひた隠しに隠していました。先生のホームページを見て初めて吃音を客観的にとらえるようになったんです。自分を認めたというか・・・。本当に今までは心に封印をしていました。
 
 私の母はひどい吃音なんです。話し方はぶつ切れで音をつなげて長く言うことができない。僕が吃音になったのは母親のせいだと思った時期がありました。そして両親の子供の育て方、私や兄弟の接し方など、恨んだことがありました。
 
 僕の吃音の原因を特定することは出来ないと思いますが、弟が生まれた時におばあちゃんの家に預けられたんですよ。2歳の時ですが、朝、目覚めたら両親がいなくてとても不安に感じたことをうっすら覚えているんです。2歳のことが記憶にあるんですね。あの不安感が吃音になったことと関係があるようにも思うのです。でも、なぜ吃音になるかはわからないようですね。弟や妹は吃音ではありませんし。

【江田】 そうですね。幼児期の不安体験が吃音に表れることがあるかと思いますが、私のことを言えば、幼稚園頃から吃音がはっきり表れていましたが、特に不安を持っていたということも覚えがないし、親族を調べても吃音者は見あたりません。私だけです。
 泣きじゃくってしゃっくりをしていたら吃音になったというような話も聞きますけれど・・・。吃音の引き金というものを推測することはある程度できますが、原因を特定することは難しいし、いわゆる犯人捜しはあまり意味がないと思います。それよりも安定した話し方習慣を身につけていくことが賢明ですよ。
 
 ところで、灰谷さんはどんなお仕事をなさっておられるんですか。


【灰谷】 ゲームソフトの企画と制作をしています。学生の頃は教師を希望していたのですが、話すことに自信がもてなくて、絵画という芸術の道を選びました。もともと絵を描くことが好きで、自分の気持ちを表現していました。それが今のコンピュータのゲームのグラフィック・デザイナーとしての仕事に活かされているわけです。


【江田】 灰谷さんの絵はとても繊細ですよね。灰谷さんのホームーページの作品を拝見してそう感じました。


【灰谷】 僕はそもそも神経質な性格なんです。これも吃音に影響しているのかな・・・。だから普段は神経質でないような大ざっぱな発想、行動をあえてとっていると思います。神経質でないように演じているというか・・・。
 今の仕事場は制作が中心ですので、電話をとることが殆どないのです。もっと多く電話をとるのが良いと思うのですが・・・。 東京の職場に移ってからは、毎朝仲間同士の数人の打ち合わせですので堅苦しい会話ではないので緊張感というのがなく、何の問題もなく話しています。改まって話すというハードルが低くなっているので自分でも物足りなく思います。 
 でも、実際問題として、制作中に電話がじゃんじゃん入ってきたら創作的な仕事が出来なくなっちゃいますよね。だから、今はあまり話さない環境が仕事にはいいのです。いつか部署がかわったら電話応対など積極的にやっていきたいと思っています。何か目前のハードルがあった方が話し方の改善意欲につながるものですよね。嫌だなと思っても話さなければならない環境は大切だと思います。

【江田】 この3年間レッスンをなさって何か得たことは?

【灰谷】話し方の勘所をつかんだ感じかなということでしょうかね。実際の会話で胸で呼吸をしているなと感じたらその場ですぐに腹式呼吸に調整しています。自分の吃音意識をありのままに受けとめて、客観的になれたことも大きな変化です。
 こうやってインタビューを受けて、自分の写真が先生のホームページに載ることなど、かつては考えられないことですよ。幼少時代からみると格段の改善です。社会でかなりの場数を踏んできたことも大きな影響を出していますね。  もともと人と話すことは好きですので、コミュニケーション上手でありたいと思っています。

【江田】 名古屋での生活と東京での生活は違いますか?


【灰谷】 名古屋は僕の故郷ですが、実家の周りは東京に比べ空間がありますね。東京は過度にゴミゴミしていてストレスがたまります。毎晩仕事から10頃に帰ってきて、帰宅してから映像ソフトの勉強もしています。毎日勉強することは多いです。
 まあこうやって毎日忙しくしていることは、無駄な過ごし方より遙かに優っていると思います。名古屋から東京に引っ越してきてあっという間の2年でした。

 そうそう、この前、妹から「お兄ちゃん、私、結婚するんだ」という電話があったんですよ。ああ、妹がとうとう結婚するんだと思ったら何だか胸がジーンときちゃいました。

【江田】 妹さんにとってよいお兄さんですね。

【灰谷】 さっき母が吃音だと言いましたが、私の両親は仲が悪くて喧嘩ばかりしていたんです。それで兄弟同士の団結が強くなって自分たちで何とかやっていこうという気持ちが育ったのだと思います。弟は教師をしていますが、お互いによく連絡をとりあって仲良くやっています。
 
 別な話になりますが、江田先生は私とこうやって話しているとき、僕の目をじっと見て話しますよね。こうやって目を見て話す人は少ないですよ。ちょっと恥ずかしくなりますよ。(笑)


【灰谷】 灰谷さんのように親しく感じる人と話すときはやはり目を凝視して話すようになっちゃいますね。私だって初対面の人とはあまり目を見て話すことはありませんよ。視線は襟もととか、顔全体とかを漂わせています。日本人ですからね・・・。親しみを持っているんだなと理解してください。

【灰谷】 今日は吃音について江田先生と心隠さず話せたのですけれど、誰か吃音意識を持っている人とも直接お会いして話したいです。

【江田】 東京で実際に集まってスピーチの練習をする場を将来設けることも考えています。いろんな方とお話しできると思いますよ。その時はぜひご参加ください。

    
                                                         
(対談日 2005年12月23日)
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                  プラス思考にもっていきたいですね。  

 三浦孝幸さん(本人のご希望により仮名)はIT関連会社のエンジニアとして、企業に出向いての説明など、ソフト技術と話すことの両方のハードな仕事をこなしておられます。
 三浦さんの体験談は、Mさん(千葉県在住 26歳 会社員 男性)「体の中にスーッと柱が立ったような、そんな感じです。」
(2003年5月11日)として掲載しております。


【江田】 三浦さんとのレッスンは2003年の1月にスタートしていますから、2年越しの電話でのお付き合いですよね。こうやって初めてお目にかかれるのはとても嬉しいです。

【三浦】 この2年間は平坦ではなかったです。レッスン初期は勢いでどんどん話して調子がいいと思っていたのですが、始めてから1年ぐらいの中盤になったころ、強い発語不安があって仕事の現場で思うようにいかなくなっちゃいました。レッスン上手で終わっちゃいけないんだと思いました。
 また、3ヶ月ぐらい仕事の都合でレッスンを中断しなければならなくなったときは、ペースを崩して大変でした。やっぱり月1回のレッスンは私にとって必要だと思っています。


【江田】 仕事で話すことが多いのですか?

【三浦】 ええ、とても多いです。他の会社に出向いて説明したりするのですが、10名位の人達に囲まれて2〜3時間休みなしで話すなんてことはよくありますね。長時間話し続けると呼吸がかみ合わなくなるというか、何か酸欠状態になってくるような感じです。おおむね1時間過ぎたあたりから厳しくなりますね。

【江田】 三浦さんが吃音意識を持つようになったのはいつ頃でしたっけ?

【三浦】 高校を卒業したときです。それまでは確かにひっかかることはありましたけれど、別に気にすることでもありませんでしたね。けれど、友達の家に電話をしたとき、突然自分の名前が出てこなくなったんです。金縛りになったというか、自分でも全く訳がわらかなかったです。今もそのときのことが心に深く残っています。
 それから話すことが怖くなってしまって、大学1年の夏休みからほぼ1年間、引きこもり状態になってしまいました。でもこれじゃいけないと思って、根性で接客業のアルバイトをしました。体験談にも書きましたが、とにかく必死で頑張りました。


【江田】 今はこうやって一般の人以上に話すことをなさっておられるのですから、不思議ですね。
【三浦】 自分で言うのもなんですが、トークの能力は同年齢の中で平均以上だと思います。 職場ではコンピュータのトラブルに関連する業務なので、お客さまの対応もピリピリ緊張します。レッスンを始めてからはその応対も上手くできるようになっていると思います。
 けれど、なぜか名刺交換のときに自分の名前を妙に意識することがあります。レッスンを始めたときは名刺交換で名前を言うのがダメでしたね。過去の吃音の場面が思い出されるのでしょうかね。感情ってなかなか抜け切れないものですよね。
 
 吃音の改善法についてさまざま試みがされているようですけど、江田先生はどのようにして自分の考えをまとめていったんですか?
【江田】 おやおや、インタビューしている私がインタビューされちゃうんですね。(笑い)
 そうですね、吃音の世界は自分が経験してなければ心の微妙な動きはわからないと思います。吃音改善の教科書はないですから、自分の辿った改善の過程を出来るだけ客観的にとらえて、皆さんに提供できればと思いました。
 大切なことは、あらゆる感情を受け入れるということ。三浦さんの高校卒業のときの電話の出来事など、心の傷(トラウマ)を否定しないで、そのまま受けて入れていく姿勢です。もうひとつは話し方の調節習慣を身につけていくということですね。吃音って病気が治るという白黒の世界ではないのですから。

【三浦】 インターネットで吃音について調べても、解決の方向性を具体的に示しているホームーページは「さわやかカウンセリング」のほかにはあまり見当たらないです。吃音の改善というのは机上の空論ではなくて、現実ベースというか実社会での体験の積み重ねじゃないですか。ですから、週一回、あるいは月一回のレッスンが現実のリアルタイム感覚で実践していくというのがすごく効果的だと思いますね。
 催眠療法とかはもっともらしいことを言っていても、何もできない。吃音についての本を読んでも、微妙な吃音感情をどう取り扱うかということは全く触れていないし、その次にビジネスがあるでしょ。器具を買いなさいとか・・・。改善の方向性がわからないとあわてちゃってそんなものに飛びついちゃうんでしょうね。吃音改善の特効薬なんてないことはわかっているのに・・・。
 僕の吃音に対する結論なんですけど、現実に即した一対一のカウンセリング、やはりこの方法がベストだと思うんですよ。2年間のレッスンを通して自分の中で凝り固まっていたものが徐々に氷解しているという感じです。

 あの〜、もうひとつ質問なんですけど、僕もあと3年ぐらいで結婚かなぁ〜なんて思っているんですけど、子供を持ったときに子供が吃音になっちゃうんじゃないかと思うことがあるんですよ。何ていうか、話し方の意識というか。大丈夫ですか?

【江田】 親の吃音が子供にうつるというのは、子供が親の話し方を体で感知することだと思います。話し出す直前に息を瞬時に吸い込んだりする親の不自然な話し方感覚を身につけてしまうのでしょう。不自然な息継ぎと硬い発語に接していると、それを自分の話し方として無意識に取り込んじゃうのでしょうね。親の吃音をすべての子供が取り込んでしまうという訳じゃないけど・・・。
 三浦さんはこうやって無理なく自然に柔らかく話しているので吃音意識があってもお子さんには何の影響もないでしょう。また、早口はできるだけ避けたいですね。
 私には24歳と22歳の娘がいますが、二人がまだ小さかったとき、吃音にならなければいいなと正直思いましたよ。
当時の私は話し方の調整は実践していましたが、吃音意識は強くありましたからね。小学校の学芸会で娘が演劇クラブで舞台でハキハキ話しているのを見て、「あいつ、親を抜いてるなぁ〜」ってジェラシーを感じちゃいましたよ。(笑い) まあ、安心してお子さんを育ててください。その前にいい人見つけなきゃね。(笑い)

【三浦】 話を聞いてホッとしました。こうやって先生と直接お話しできるって本当にいいですね。電話でもいろいろ先生と話ができるのですが、直接だともっと伝わってきます。経験に裏打ちされた説得力というか、先生の表情とか目線が安定しているんですよね。きょろきょろしていないというか。話し方というより精神的に乗り越えている内側の姿勢なんでしょうかね。

【江田】 お褒めのことばをいただいて嬉しいです。人と話すことはその人の心のあり方が表面に出ますから、吃音改善もただ単にことばを発するということだけじゃなくて、気持ちの余裕を持ちたいですね。

【三浦】 要は、喋れればいいというのではなくて、総合的なものだと思うんです。仕事でお客様から、説明がわかりやすいということでお褒めの言葉を頂くときなどは、本当に嬉しいです。 自分が吃音という経験をしているからなおさらですよ。
 大学1年の引きこもりの頃の自分と比べると、よくここまで成長したなと思います。レッスンは僕の心の中での「お守り」ですよ。(笑い)
 レッスンは自分の話し方をチェックしてもらうということで受講しています。毎日忙しさでかまけてしまうんですが、レッスンの始めに数分間腹式呼吸をするでしょう。これが心を落ち着け安定ペースの土台となる。僕にとって電話でのレッスンは、吃音のレッスンというのではなく、話し方そのもののレッスンとして受け止めています。

【江田】 これからの抱負などありますか?

【三浦】 これからも仕事は頑張っていきます。まだ社会人3年目なので、甘えられる部分もありますが、これが10年目とかになるとそうは言っていられなくなります。部下にもちゃんとわかりやすく指示、伝達していかなければなりませんし、人にどのように説明するかといったことも部下に教えなければなりません。
 あと、ずっと先の話だと思いますけど、僕は自分の会社を創りたいという気持ちが昔からあるんですよ。何か障害をもっている人であっても働ける環境を提供できる会社です。


【江田】 気持ちがあるところに道は拓かれていくと思います。

【三浦】 また、話す立場に自分を積極的に置いていきたいし、今よりもレベルの高いものを要求されるのがいいですね。私の知人で吃音者ではありませんが、話すことが苦手というか、説明などで全然話せない人がいるんですよ。その一方で、吃音者が吃音に立ち向かっていくと、人よりもうまくなっていくと思います。これは僕自身が様々な職場を経験して強く感じていることです。一般の人は話し方について我々ほどには悩まないから、何を言っているのかわかりにくい人って以外と多いじゃないですか。そのあたりの現実をプラス思考にもっていきたいですね。

【江田】 今まで苦労したことは無駄ではないということですね。

【三浦】 大学のとき吃音を抱えながらアルバイトで耐え忍んできたあの体験を乗り越えて今の自分があると思っています。体育系のスパルタ教育そのものですよ。自分の居心地の良いところだと、ある程度のところで終わってしまうので、自分の力をちょっと上回る場面にあえて自分を置いていきたいと考えています。
                                                         (対談日: 2005年2月27日)
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                   自然体が一番いいですね。

 飯田君(本人のご希望により仮名)は千葉県在住の高校2年生。高校受験の押し迫る中学3年の11月(2002年)に、面接に備えレッスンを開始しました。それからあっという間に2年が過ぎたという感じです。実際に会ってお話しを伺い、音楽への情熱を注ぐ彼の姿に私の過去がダブり、30年前の青春の思いが湧いてきました。
 飯田君のレッスン体験談は、Iくん(千葉県在住 中学3年 15歳 男子)「高校受験の面接、話せました!合格しました!」
(2003年2月8日)
としてすでに掲載しています。


【江田】 飯田君とレッスンをするとき、よく音楽の話が話題になるんだけど、音楽の話からしていこうか。


【飯田】 今、僕はコントラバスをやっているんですよ。高校の吹奏楽部と地域のオーケストラに参加して、コントラバスの先生に毎月2、3回程度個人指導を受けています。 将来は音楽関係での仕事をしたいと思っているので、音大受験を目指しているんですけれど、進路についても先生が相談にのってくれます。
 小さいときからピアノをやっているので学校でも音楽は好きでした。中学校の卒業式の時には学年の合唱の指揮を先生から頼まれてやりました。指揮とか演奏とかはどんなに人が多くても全くOKなんですよ。人の前に出ることが楽しいです。オーケストラで演奏するときもすごく張り切っちゃいます。楽しいですよ。
 音楽をするようになってから、感性が鋭くなってきたように思います。曲を聴いて、いろいろなことを思い巡らすことがあります。

【江田】 飯田君とのスピーチのレッスンを2年間以上でやっていると、飯田君の性格は感性が豊かで、外向型だなと思うんだけど、どう?

【飯田】 そうですね。とにかくあまりクヨクヨしないタイプなんですよ。いやなことでも一日経つとパッと忘れてしまう。中学の時はよく発表などでどもっていたんだけれど、「仕方ないや。しょがないな。まあいいや。」と受け止めていましたね。あまりこだわらない性格なんです。

【江田】 クヨクヨしないというのは、話し方の改善にプラスに働いているように思うのだけど。
【飯田】 うん、多分そうだと思う。オーケストラでコントラバスのソロをして、ちょっと失敗してもすぐ気持ちを持ち直せますね。自分では楽しく演奏しようと考えていますから、間違いがあまり気にならないんです。間違ったところはまぁしょうがないという感じで。この前はソロのコンテストがあってピアノの伴奏で演奏したんですけれど、面白かったですよ。出番を待っていたとき、友達が話しかけてきて、その話に夢中になっていたら緊張感がなくなっちゃって。サッとステージに出て、演奏しちゃったという感じです。

【江田】 スピーチについてだけれど、飯田君とレッスンを始めたのはもう2年前になるんだね。早いね。

【飯田】 そう、僕が中3のときで、高校受験の面接がありました。高校に合格したと思ったら、今年の4月から3年生。そして今は大学の受験を考えているんですからね。本当に早いですよ。

【江田】 始めの頃はすごく早口で何を言っているのかわからなかった。外国語で話しかけられているようで、「本当に日本語を話しているのかな?」って思ったよ。(笑い)

【飯田】 あの時と今とでは話し方がずい分違ってきています。年齢とともに落ち着いて話せるようになっていると思います。今こうやって先生と話していて何も苦じゃないですよ。もともと話すことが好きなんです。
 小学生の時は初対面の人と話す時など、場によってことばが出なくなっていましたね。学校での朗読も苦手で途中で止まっちゃいました。けれどクラスのみんなは僕がことばの教室に通っているということで笑ったりすることなく、とても好意的に受け止めてくれていました。だから小学校でのいやな思い出はないです。


【江田】 今、学校での発表とか朗読などはどう?

【飯田】 今はごく自然に話しています。学校ではあまり発表の機会がないんですけど、答えを求められたりする時も全く問題ないですね。英語で言えなくなるのは単語が読めないというか、発音がわからない時ですね。

【江田】 それは吃音の問題じゃないね。発音がわからないのだから。(笑い)

【飯田】 学校では部活の仲間とか、先生と話をしたりとか、よく話します。僕って人から気軽に話しかけられやすいタイプなんだと思います。後ろからヤァとかオーとか、よく声をかけられます。
 話すことと言えば、そうそう、 最近ファミレスのバイトを始めたんですよ。ちょっと疲れますけれどね。ファミレスではちゃんとマニュアルがあって、ある程度、話し方が決められているけど、抵抗なくやっていま
すよ。今は実習が終わってキッチンに入ってオーダーをかけています。 次から次へとオーダーが来るので品目と数を正確に言っています。勝手に言い換えちゃったら大変ですからね。(笑い)
 出前もやるんですよ。一回の出前が100円のブラスとなるんです。でも出前は自転車だからすごく寒くて、遠いところだと結構キツイ。ドアのブザーを押して用件を言って会計を済まして、「ありがとうございました」で終わるわけですけど、最初は緊張したんだけれど、今は慣れちゃいました。


【江田】 「さわやかカウンセリング」を自分でインターネットで調べたということだけど、どんな動機で捜したの?

【飯田】 自分の話し方はクセがあるな〜って思っていたんですよ。話し方が気なっていたし、直したいと思っていました。

【江田】 直したいと思っていた当時の話す感覚と、今こうやって話している感覚は違う?

【飯田】 こうやって自然に話せるのが以前と随分ちがいますね。とにかく自然なんですよ。もともと友達と話すのが好きなんですけど、中学の時は無理をして話していたっていう感じですね。今、部活の友達と食べにいったりする時なんか、みんなの注文をまとめて、注文をすることも自然にやりますよ。人との会話は、話題が頭に次から次へと浮かんでくるのでよく話します。
 電話とか部活の交渉とか、話す場面が多いですけど、不自由なくやっています。時たま「このことば言い難いな」と感じることはありますけど、それはそれとして受け止めています。自分で調節しながらあまりこだわらないようにしています。


【江田】 何か普段話すことで飯田君が日頃心がけているようなことある?

【飯田】 やっぱ普通が一番。

【江田】 と言うと?

【飯田】 自然でとにかく普通であること。上手く話そうと無理に意識すると上手くいかないし、また意識しなさすぎても改善できないじゃないですか。レッスンを始めた頃は上手く話そうと努力して、意識が入りすぎた感じでしたね。けれどスピード調整をしなければ調子が崩れちゃうし・・・。だからその中間の普通の自然体が一番いいんですよ。この中間というのが難しいのだけど・・・。
 吃音って病気じゃなくて、話し方の悪いクセだと思いますよ。自分ひとりでは治し難い話し方のクセを直すためにレッスンを受けていると思っています。
 あと、日頃心がけてることは、食べ過ぎないこと。最近部活の仲間とよくラーメンを食べに行ったりするので、ちょっと太り気味になっちゃいました。(笑い)


【江田】 食べ過ぎないようにしているのは私も同じだよ。あの〜これさ、私が演奏しているギターソロのテープなんだけど、今日の記念に受け取ってください。5曲しか入ってなくて、片面15分で終わってしまうシロモノだけど、腹式呼吸をしながら聴くと、癒しのテープになるからいいと思うよ。(笑い)
                                                         (対談日: 2005年2月27日)

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