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    吃音(どもり) Q&A  

   さまざまな方々と吃音(どもり)についてのご相談をさせていただく中で、よくいただくご質問をここにご紹介いたします

Q.1

誰でもことばがつかえたり、どもったりしますが、吃音(どもり)とどう区別をしているのですか。

Q.2

小学生の息子が言葉をつかえて話します。親としてどのように接していけば良いのでしょうか。

Q.3

何が原因で吃音(どもり)になるのでしょうか。

Q.4

吃音(どもり)は治るのでしょうか。

Q.5 

催眠療法で吃音(どもり)を治すことについてどうお考えですか。

Q.6

吃音(どもり)改善に向けての心構えはどのようなことでしょうか。

Q.7

江田さん個人の吃音(どもり)体験を聞かせてください。

Q.8 

吃音(どもり)の改善は年齢が増すにつれて難しくなるのでしょうか。

Q.9

吃音(どもり)改善のために集中的にトレーニングをすることは?

Q.10

個人レッスンとグループレッスンと、どちらが効果的でしょうか。

Q.11

耳鼻咽喉科などの医療機関でも吃音の相談に応じてくれるのでしょうか。また、誰に相談すれば良いでしょうか。

Q.12

江田さんの吃音(どもり)改善は何を目指しているのですか。

Q.13

吃音矯正器具を使うことについてどうお考えですか。

Q.14

ひとりでできる吃音(どもり)改善のための練習方法を教えてください。

Q.15

練習量は多ければ多いほど改善効果があるのでしょうか。

Q.16

電話カウンセリング&レッスンは小学生でもできるのでしょうか。

Q.17

普段の会話ではほとんどどもらないのですが、学校で数学の答えを言う時とか、名前や短い英語の単語や挨拶などの短いことばの時、つかえてしまいます。どうしたらいいでしょうか。

Q.18

吃音(どもり)は遺伝するものでしょうか。

Q.19

江田さんはどのようにして吃音(どもり)を治していったのですか。誰かに指導を受けたのですか。

Q.20

電話だけのレッスンで吃音(どもり)は改善されるのですか。

Q.21

小学生のための電話レッスンはどのようにすすめているのですか。また「ことばの教室」での吃音(どもり)改善について教えてください。

Q.22

「ありがとうございます」の「あ」とか、「お世話さまです」の「お」などでつまってしまいます。楽に言えるための良いアドバイスをください。

Q.23

吃音(どもり)を治そうという努力は無駄のように思うのですが。

Q.24

私は人前で話そうとすると緊張します。吃音が改善されると緊張しなくなるのでしょうか。

Q.25

江田さんは、過去の吃音(どもり)意識が戻ってくることの不安はないのですか。

Q.26

吃音(どもり)は「自然に」治るものなのでしょうか。

Q.27

レッスンの時は上手く話せるのですが、職場での緊張する場だとなかなか上手くいきません。(受講生より)

Q.28 レッスンを受けていて、吃音(どもり)改善に適した環境とそうでない環境とがあるのでしょうか。
Q.29 何回ぐらいレッスンを受けると吃音(どもり)が改善されるのですか。
Q.30 吃音(どもり)を治そうとすると、かえって話すことに神経質になってしまうのですが。
(受講生より)
Q.31 一般の人は腹式呼吸など知らなくてもちゃんと話せるのに、なぜ腹式呼吸を指導するのですか。
Q.32 職場ではあまりどもらないのですが、家族と話す時はなぜかひっかかってしまいます。(受講生より)
Q.33 スピーチをする時、原稿を作るのとメモ程度で話すのと、どちらが良いのでしょうか。(受講生より)
Q.34
会社の電話で「お電話ありがとうございます。」だけが言えなくなってきました。日常の会話はすべて問題がないのですが、私も吃音(どもり)なのでしょうか?
Q.35
自分の吃音(どもり)が子供にうつってしまうのではと思い心配です。(受講生より)
Q.36 吃音(どもり)は治療するものですか?
Q.37 手話をしながら話す時はスルスルとことばが出て全くどもりません。なぜでしょうか。

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Q.1
誰でもことばがつかえたり、どもったりしますが、吃音(どもり)とどう区別をしているのですか。

A.急いでいる時、驚いた時、不意をつかれた時、恐怖にとらわれた時などでは、ことばがつかえてなかなか出てこないものです。これは誰もが経験することですが、ことばのひっかかりが常習的になっていたり、ある特定の場面で繰り返しみられる場合は吃音と思われます。
具体的に申しますと:

■母音(あいうえお)あるいは「か行」の発音など、本人にとって発語の不得手な音がある。
■始めの音がなかなかでない(難発性)、音を繰り返したり(連発性)あるいは音を伸ばすようにして話す(伸発性)。
■ことばが出にくくなると足を床にトンと踏んで声を出すなど、瞬間的に付随動作をしてしまう。(随伴行動)
■息を出すべきところを吸ったりして、不自然な呼吸のしかたで話をしてしまう。
■話をすることにいつもストレスを感じている。そのために仕事や勉強などへの集中力がそがれてしまうことがある。
■横隔膜(肺の下あたり)がせりあがり、肩で息をするような状態で話をする。また話をする時、舌や唇など体の一部に不自然な力みが入ってしまう。
■発音しにくいことばがあると、「言い換え」をしてしまう。
(例えば、「きのうの夜、お祭りに行ってきたよ」と話そうとする際、「きのう」が言いにくいので「昨晩」などと瞬時替えてしまうことなど。)

ご本人のその時の疲労の度合いや精神状態ですらすら言えたりつまったり、その時々により随分異なってきます。

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Q.2

小学生の息子が言葉をつかえて話します。親としてどのように接していけば良いのでしょうか。

A.ご両親が息子さんの気持をよく理解することが大切と思います。そのためにもご家族の方々が吃音に関する理解を深めていかれることをお勧めいたします。話し方を正したり、励ましたりすることは本人を神経質にさせることになりますので、息子さんの話し方ではなく話の内容を聞き取ろうとする姿勢が一番と思います。
 小学5〜6年生については、Q.21をごらんください

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Q.3
何が原因で吃音(どもり)になるのでしょうか。

A.いろいろな要素が重なるため、はっきりとした原因は言えないのではと思います。ただ吃音のきっかけになり得る事柄として、驚いた時などにうまく言葉が出せなかったことが記憶に残り、話すことへの恐怖心を持つようになってしまったことや、どもるまねをふざけてしていたことなど様々です。親の不和などによる家庭内のストレスのもとで幼児期を過ごすと吃音になる可能性が高くなることも考えられます。
 私の記憶では小学生の頃、授業参観で先生に指名されて大きな声で答えたのですが、たまたまことばが引っ掛かってしまい、後ろの親たちにクスクス笑われてから(大人は悪気があったわけではなく、微笑ましく思って笑ったのだと思いますが・・・)「ことばがつかえたら笑われる」との恐怖心が入って意識過剰になってしまいました。また、ご家族に吃音者がおられますと、「あのようにならないように」との周囲の意識が本人に意識過剰となり、話すことにこだわってしまうこともあります。幼児期に話し方やアクセントなどを親が細かに訂正したりすることも、マイナス要因といえます。例外的には、新しく入れ歯をしたため、舌が歯にひっかかりどもるようになったということもあるようです。
 吃音は舌や声帯などの器官の欠陥に原因があるのではなく、周囲の刺激に反応していくなかで、本人の制御意思を超えた防御条件反射が定着した状態だといえます。ひとり言や他の人々と一緒に声を出して朗読する際は、どもることがほとんどないことからもこのことが言えると思います。

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Q.4
吃音(どもり)は治るのでしょうか。

A.「治る」という意味合いは、ある方は早口でスラスラお話をするようになることと考えますし、他の方は、大勢の前で緊張しないでお話ができることと受けとめられたり、人によってさまざまです。
 私の考える「治る」とは、話し方を意識すれば緊張する場面でも話ができることです。ゆっくり、たどたどしくても構いません。正しい話し方を意識して自分をコントロールできるなら、その方は治ったといえると思います。私も意識していないと未だに過去のクセ(私の場合はのどに不必要な力が入るような発声筋の悪い使い方)に戻る時があります。そう気付いたときはその場で修正するようにしています。現在数百人の人々の前で司会などをさせていただくことがありますが、どんなストレスを感じる場合でも自分の話し方をコントロールできますので完全フリーの状態です。私が過去吃音者であったことは誰も信じられないようです。
 吃音改善の最終段階は実に微妙な心の世界ですが、ご本人の日頃の心がけと実践の中に最後の突破口を見出されることを願っています。改善に向けての模索をあきらめてしまうことはとても残念なことです。

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Q.5
催眠療法で吃音(どもり)を治すことについてどうお考えでしょうか。

A.私自身は催眠療法を受けた経験がありませんので、個人体験からの良し悪しを語ることはできません。理論から考えますと、ある程度の効果はあるかとも思いますが、実際に話をしなければならない場面に直面する際、どこまで通用するかはなはだ疑問です。緊張しないようにするのではなく、緊張する中で話ができることが改善なのですから。過去のある不快な場面と同じような場面に直面する時、潜在意識の中からひょいともたげてくる強力な恐怖心、不安をどのように処するかが課題です。
 心地よいお話体験を積み重ねていくことは、不安を増幅させる条件反射を弱めていく有効な手段と思います。「緊張の中でも自分の納得のいく話し方ができた」「こうやって話していけば力まなくてもいいのだ」など、ご自分の快い体験を何度も何度も重ねることによって本当の自信が生れてきます。潜在意識にある不安・怖れを日頃の良き習慣で弱めてしまうのです。その意味で実際的な習慣づくり指導させていただいています。

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Q.6
吃音(どもり)改善に向けての心構えはどのようなことでしょうか。

A次のことに心を留めていただくことをおすすめしています。

1.吃音とうまく付き合っていこうと長い目で受けとめていくこと。
 これではダメだ、早く治そうと思えば思うほど焦る気持ちが強くなり、逆効果となります。「これが私の話し方なのだ」「ことばがつかえるのも私の持ち味だ」と受けとめていきたいものです。

2.話をすることに完全主義をとらないこと。

 ある方はお話をすることにとても神経質になっておられます。ことばが引っ掛かったからといって人格が否定されるわけではありませんl。女優の黒柳徹子さんのように早口で話しをすることを理想としないことです。今の自分を受けいれていきましょう。今の自分を否定してあるべき姿を求め続けるといつもそのギャップに苦しみ、不幸意識を背負い続ける悲劇のヒーローに仕立ててしまいます。今を肯定して、できるところから改善の道をコツコツと進んでいくことが最善の道と思います。

3.「治るか」「治らないか」にこだわらず、改善の方向を求めていくこと。

 吃音は必ず改善の方向に向かいます。回復へのプロセスは個人によりそれぞれ異なるでしょうが、適切なトレーニング、意識付けを積んでいけば、確実に改善への方向に向かっていく筈です。「ああすればいいかな、こうしていくといいかな」などと、ご自分で取り組んでいく姿勢が何にも勝る大きな推進力と思います。

4.とにかく気長にコツコツと。

 お話をする時、舌やあごに不自然な力が加わったり、横隔膜が硬直するなどの条件反射が起こります。これらの反応は自分の意志から離れた動きですので、その場で無理に抑えようとしても逆効果です。
 しかし適切な指導を受け、コツコツと実践なさるのならば、緊張する中でもお話ができる制御術を体得していくことが可能です。何を意識するか、人によってさまざまですが、自分が話をする時のクセをお知りになり、よい習慣(腹式呼吸、呼吸のタイミング、正しい姿勢、抑揚の取り方、その他)を生活の中で実践していく意識を持ち続けることです。やがて緊張の中にも安定してお話をしているご自分をイメージすることができるようになってきます。学生であればクラスの前で発表している自分、社会人であれば社員の前での営業報告や結婚式で司会をしているご自分の姿を描いてください。

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Q.7
江田さん個人の吃音(どもり)体験を聞かせてください。

A.吃音者であれば経験するであろうあらゆることを経験しました。その中でも感受性の強い思春期の記憶は多く残っています。
 小学生の時でしたが、国鉄の飯田橋駅までの切符を買いたかったのですが、当時は誰でも切符売り場の窓口で「いいだばし」と言って買わなければなりません。自分の順番がやっと回ってきても、胸がドキドキして始めの「い」が出てこない。(難発性吃音)とぼけてまた後ろに回って順番を待つのですが、またことばが出てこない。何度もやるけどやっぱりダメ。とうとうあきらめてトボトボ歩いて家に着いたときはとっぷり日も暮れていました。親からは何でこんなに遅く帰ってきたのかと注意されましたが、理由を言うのもイヤだからただ黙っているだけ。自分がつくづく情けなくなりました。
 将来の職業はバスの運転手になろうと決めたのもこの頃です。人と話さないで済むからと思ったからです。けれどしばらくしてワンマンバスが走り始めて、運転手がマイクをもって「次は神楽坂」なんてやり始めたので、これは僕にはできないダメだとあきらめました。ベートーベンが晩年耳が不自由になり、筆談で会話をしたという話を聞いた時、自分も筆談で会話したいなと本気で考えたものです。
 小学校の卒業式クラス全員が在校生にひと言ずつ何か言うのですが、先生が心配してくださり、私だけ何も言わないように配慮してくれました。言えない自分が惨めで、また言わなければならないとしたら地獄で、どちらに転じても自分を落ち込ませました。
 中学・高校も吃音のストレスはかなり大きかったです。新学年に新しい教科書を手にした時、文字が刃物のように目に突き刺さってきました。どこを読まされるのか、そんなことをつい考えてしまったものです。いつ自分に朗読の順番が回ってくるのかが気になって授業そのものに集中できない。朗読の練習をいくら事前にやっても、実際の場では緊張して声が出ない。先生の質問に答えがわかっていても、ことばが出ないのでくどくどと説明される。これもやり切れない気持です。また「君の名前は」と聞かれるのが大の苦手。「江田(えだ)」の「え」の母音がでてこない。ある時は「佐藤です」なんて言い替えてしまって・・・、あとで「君は佐藤だろう」といわれ、今さら江田ですなんて言えないし・・・ホトホト自分が嫌になりました。上級生からは「ドモ吉」なんてあだ名されて・・・学校がイヤで苦しくて・・・朝の登校時にすでに早く夕方になってほしいななどとよく考えていました。
 
 東京都内の吃音矯正所にも小学生の時、そして高校1年生の時と2回程ある期間通いました。そこに通う方々はみんな吃音者です。「ああ、ここではどもってもいいんだ。だれも変に思わないんだ」と思うので、ぜんぜんどもらない。「高いお金払っているのだからどもってくれよ」と内心思うのですが、朗読、会話練習スラスラ。このことからも吃音が外部の人の反応によって生じる条件反射の産物であることがわかります。
 社会人になれば仕事での電話、上司への報告など正確さを求められますので「言い換え」ができない。「課長は2時30分にお帰りになります。」をいくら2時が言いにくいからといって勝手に3時に換えることはできません。人の何倍ものストレスを抱える日々でした。
 キリスト教の集まりで司会をしたときのことですが、会衆の前での聖書朗読で、意識が入って途中で詰まってしまってどうにも先に進めなくなりました。前列に座っていた方が見るに見かねて私の代わりに横に立って読んでくださいました。いったい自分は何のために司会に立ったのか・・・と実に情けない思いになりました。
 このような経験を延々お話すれば、このページがトイレットペーパー1巻き分の長さになります。読む方もウンザリでしょう。
 
 吃音を抱えたことにより、人生の中で問題と思われる事柄の受けとめ方の幅(選択肢)が持てるようになったことはプラスであったと思います。「吃音とうまくつきあっていこう」「吃音も私のパーソナリティーの一部だ」と受けとめていく「どもり肯定姿勢」です。その一方、改善へのステップを踏ませていただき、現在このように自由にお話ができるのも大変ありがたいと思っています。
 改善の度合いはお一人おひとり異なるでしょうが、現状がどうあれ、改善の可能性がどなたにでも十分にあることを私自身の経験からも確信しておりますので、このような形で吃音・スピーチ改善のお手伝いをさせていただいています。


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Q.8
吃音(どもり)の改善は年齢が増すにつれて難しくなるのでしょうか。

A. 一般には年齢が増すにつれて改善は難しくなるとみなされる傾向がありますが、私自身の過程を振り返ってみましても、年齢制限はないと受けとめています。
 2〜5才の時期に吃音障害が見られる子供の70%は治っているとのイギリスの最近の報告がありますが、日本でも大きくは変らないと思います。統計でみる限り年齢が低い方が治癒率は高いといえます。
 30代、40代で吃音を持っておられる方は、さまざまな経験を通して、社会への適応力、自己客観性、自制力、障害の受けとめ方への大人性を深めておられるに違いありません。また焦る気持も薄らいでおられるのではないでしょうか。その意味では、吃音を無理に改善する必要はないと思います。
 余裕のある心で吃音と付き合っていくと、ちょうど山登りで急に見晴らしの良い場所に立つように、前と較べてずっと楽に話をしている自分に気付くことがあると思います。
 年を重ねておられる「落ち着き」という利点を活かしつつ適切な改善意識を持っていかれるなら、むしろ年齢が若い時より好都合なのではないでしょうか。

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Q.9
吃音(どもり)改善のために集中的にトレーニングをすることは?

A.吃音改善は体質改善をするようなもので、即効性は必要としません。また何かを新しく取り入れることではなく、歪められた発語プロセスを解除していくことです。そのためには長期間の時が必要です。
 吃音者は快いお話体験が乏しく、失敗経験(本人の願っている話し方ができない)の積み重ね記憶が圧倒的です。だれでも人前で話をするような時、緊張してことばがひっかかることがありますが、表面はおなじひっかかりであっても吃音者と吃音でない方との発語にいたるまでの心理過程は大きく異なります。吃音でない方が緊張してどもったのは突発性であり、吃音者はことばを正しく言おうとして事前にかなりの意識を重ね、無理に押し出した結果です。その過程は毎回しっかりと記憶の層に積み重ねられます。また、仮にうまく話せたとしても、その場をなんとか「切り抜けた」という記憶になり、話すことに安定感を持った経験が少ないです。脳裏にしっかり刻まれた禁止令ともいえるマイナス記憶を解除していくには、心地よいお話体験の積み重ねが必要です。それは時間をかけて生活の現場で培われるものであり、この快体験が本当の自信につながっていきます。
 集中ということにこだわらず、時間をかけて心の傷の解放・癒しと、安定した話し方感覚を実践を通して育てていくことが有効と受けとめています。

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Q.10
個人レッスンとグループレッスンと、どちらが効果的でしょうか。

A
.基本は個人レッスンだと思います。理由はひとりひとり話し方の習慣が異なり、改善に向けて意識して心がける事柄は人それぞれだからです。「ここをこんな風にやってみたら・・・」などということは個人レッスンでなければなかなか判らないことでしょう。腹式呼吸法、発声法などはグループでまとめてできると思いますが、ご本人が実際に話しをする際にどのように適用されているかは個人レッスンを通してのみチェックできると思います。私個人の経験からしても、グループだけのトレーニング効果はあまりありませんでした。
一方、10〜50人位のグループで個人レッスンで積み重ねた経験を踏まえて発表の実践体験が持つことができれば理想的です。

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Q.11
耳鼻咽喉科などの医療機関でも吃音の相談に応じてくれるのでしょうか。また、誰に相談すれば良いでしょうか。

A.声を出すのは声帯を通してですが、これはあくまで器官として外から見える動きであって、吃音はほぼ100パーセントと言えるほど精神的なものです。ですから吃音者の発語プロセスを咽喉科の先生が見極めることは無理があるように思います。たとえ理解されたとしても、それは知識の範囲であり、吃音の実感覚は捉えにくいでしょう。
医療関係やその他の機関、団体、個人に相談されるにしても、やはり担当者個人の資質が問われると思います。吃音の相談に応じられる人の資質を申しますと:

1.本人が吃音体験者であることが望ましい。
 絶対に体験者でなければならないという訳ではありませんが、体験していない人がどの程度心の動きを理解できるのか、はなはだ疑問です。言い換えれば、体験者は内側から語り、非体験者は吃音者の外の動き(吃音状態)をみて心理を推測するといえます。自己経験が無くて、改善のための具体的階段を作ることは限度があるように思います。体験者は共感性を持ちますが、非体験者は優位性をもって吃音者を「治療する」姿勢に入ってしまう傾向を懸念します。

2.吃音から完全に自由になっていること
 完全に吃音がなくなり、実社会で安定した正しい発語ができていなければ、その方の理論がどんなに正しくても指導には不適切でしょう。数百人の前で安定したお話が出来るとともに、吃音感覚を忘れていないというような二つの世界を持っている人は、さまざまな角度から吃音を検討できる素地をお持ちと思います。

3.客観性を備えていること。
 吃音改善をされた方々の体験発表に接してお分かりと思いますが、改善の程度や過程はそれぞれ異なっています。個人経験を他者にそのまま当てはめてしまうことは押し付けに過ぎません。「たまたま自分はこのようにしていったら、このような結果になった」というように、参考としてお分かちできればいいと思います。ひとことで吃音といってもその状態は大変幅がありますから、さまざまな事例を研究し対応できる広さが要求されます。

 あなたが誰かと相談なさり、「この人、どもることわかってないのでは・・・」とお感じになった場合、更に話をすすめていくことはあまり意味がないと思います。 


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Q.12
江田さんの吃音(どもり)改善は何を目指しているのですか。

A.
2つあります。ひとつは吃音と上手に付き合っていく適応力を高めること。もうひとつは改善意識の定着化です。

■吃音との共生とでも言いましょうか。 治るか治らないかの白黒の世界ではなく、うまく付き合っていく適応力を育てることです。吃音の受けとめ方はひとりひとり随分異なるようです。聞き手からはひどくどもっていると思われる人が平気でどもり、ご自分を主張しておられ、殆ど目立たないのに相当の神経を払っておられる方もいらっしゃいます。どもるという同じ事実があっても、それに悩む人とあまり悩まない人、大きく影響を受ける人とさして影響を受けない人がいます。他者とのコミュニケーションをしていく上で重大な差し障りがなく、本人の悩みが軽ければ事実上吃音を乗り越えておられるのではないでしょうか。「こうあるべきだ」から「うまく話せるに越したことはない」程度に受けとめていく姿勢を培っていきたいものです。

■もう一つは改善意識を持ち、行動を習慣化することです。
 改善意識を持つことは何事においても健全な受けとめ方です。以前の私の姿勢は前かがみで背中を丸めていました。ある時点で姿勢を正そうと心に決め、よく壁にぴったりと背中をつけて自己チェックしたものです。姿勢を正していると発声や気持もよくなることを体感しているのですっかり定着しています。意識を持ちつづければ良い習慣が育まれます。
 吃音の改善は坂道を登るというよりもスパイラル(らせん状)にぐるぐる回っていくようなものですので、スポーツの練習と同じ様に少しづつ毎日気長に続けることです。治すためという意識を捨てて、ただ習慣としてその時間を楽しんでいきましょう。正しい姿勢、呼吸法、発声法、発音法、朗読、ひとり言、イメージトレーニング etc・・・・レッスンの中でこれかなと思うものを意識してご自分でコツコツ生活に取り入れていってください。良き習慣は自然治癒力を高め、悪癖への逆戻りを防ぎます。

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Q.13
吃音矯正器具を使うことについてどう考えていますか。

A.具体的にどのようなものがあるのかよく知りませんので、何とも申し上げられません。ただ「これで治る」とか断言していると余りにも短絡的すぎるのではと思います。「これで治す、治る」と思わないで、あくまで改善の助けとなる程度に受けとめてくのがいいようです。器具を購入するのではなく、使用料を払って使えればいいですね。経済的に大きな犠牲を払って購入して、あとで後悔するようなことは避けたいです。

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Q.14
ひとりでできる吃音(どもり)改善のための練習方法を教えてください。

A.とりあえずひとりでできる練習としては、

■姿勢のチェック: 背筋をピンと伸ばして、少しあごを引くような感じでのどに力を入れないとクリアーな音質になる。
■発声練習: 「あいうえおあお」など、口を通常よりはっきりと動かして発音する。市販の本を参考にするといいと思います。
■朗読練習:「私は柿が好きです」の「かき」が言いにくい場合は、「かぁき」として「あ」を強く出して発音するなどの工夫をする。息の流れを保たせる息継ぎ。早口ことばを普通の速度ではっきりと読む練習。
■リズム練習:テンポを意識しながらのお話し練習。
■適度な体の動かし方:。立って実際にお辞儀をしながら「おはようございます」と言うような体を動かしながらの発語練習。座って話したり、立って話したりなどの形を変えての練習など。
■テープを聞きながらのリピート練習。
■イメージトレーニング:様々な場面で自分が話をしていることをイメージしながらの練習。

などが挙げられますが、ひとりだけでこれらの感触をどこまでつかんでいけるかが課題として残ります。

 ひとりで練習をして、現場でその練習通りにうまくいくかというと、実際はそう簡単なものではないことに直面します。吃音は外部刺激の反応によって生じるからです。外的刺激のないひとりでの練習の時はほとんどどもりませんが、いざその場に立たされた際、横隔膜や発語筋の硬直などの身体反応が生じますと、練習時の心の余裕はどこかにいってしまうものです。
 自力で吃音改善を果たされた方は、外的刺激のないもとでの練習と、実際の現場での心理ギャップを最小限に抑えることに成功したと解釈できます。
 「外的刺激のない個人練習の世界と、吃音であることに非受容的な厳しい現場との二つの世界での心理ギャップを人為的に可能な限り小さくしていくこと。」これが私が指導させていただいている目標でもあります。

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Q.15
練習量は多ければ多いほど改善効果があるのでしょうか。

A.練習量が多ければ良いとは考えていません。
 特定の音が誰もいないひとりだけの場合でもつまるという吃音が重い段階では、練習量に応じて改善も伴うように見受けられます。
 しかし、ちょっと電話でことばがひっかかる、場によって発語不安にかられるという軽度のレベルになりますと、微妙な心理的要因が大きいので、朗読など自分ひとりでの練習は毎日5分程度とることができれば良いのではないかと考えています。

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Q.16
電話カウンセリング&レッスンは小学生でもできるのでしょうか。

A.できます。現在電話でレッスンをさせていただいている最年少は、小学4年生です(2007年4月現在)。
 小学生の場合、本人とお会いしてリレーションをつけてからスタートできれば理想的ですが、直接会うことができなくても、両親と連絡をとりつつレッスンをすすめさせていただいています。
※電話カウンセリング&レッスン体験談をお読みください。

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Q.17
普段の会話ではほとんどどもらないのですが、学校で数学の答えを言う時とか、名前や短い英語の単語や挨拶などの短いことばの時、つかえてしまいます。どうしたらいいでしょうか。

A.名前、数字、英語の短い単語、挨拶など、ことばが短ければ短いほど言いにくくなるものです。「おはようございます」でも、ごく親しい人ならいいのですが、ちょっと改まると、決まりきった表現なので緊張します。緊張する理由は、ことばの言い換えができないことと、話すタイミングの余裕が与えられないという心理的プレッシャーにあります。
 ある単語がとても気になって、マイナスの自己暗示をかけているようですね。すでに言う前に「いえるかな?またダメかな?」と心の中で問いかけていて、実際に言う時には、のど、舌や肩に力が入り、肺の下にある横隔膜がギューッとせり上がり、肩で息をしていると思います。
 それでは、どうしたら楽に話せるようになるか?これこそ、吃音改善の命題です。楽に言うヒントとして、
(1)単語だけに気をとらわれないで、その単語を含むフレーズとしてのまとまり感覚で話す。
例えば、「田中サトシ」でしたら、「私は田中サトシと言います」などと、前後に言葉を添えて、流れの中で抑揚をつけると楽です。
(2)どうしても「田中」だけでしたら、「たぁなぁか」というように、後ろの母音を強く出すようにすると、滑り出しがスムーズになります。
(3)単語を意識しないようにワザと別のことを考えるか、何も考えないようにして、その場の瞬間にパッと話すようにする。

(1)や(2)は実践を通して習慣化していけるのではないでしょうか。舞台俳優がその役によって話し方をも変えていくように、今までの自分の話し方と違って話すという役者意識を持つことは大きな影響を与えます。
 
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Q.18
吃音(どもり)は遺伝するものでしょうか。

A.残念ながら遺伝についての知識がないのでお答えできる立場にありません。専門の方のご意見にお委ねします。
 吃音が遺伝するかどうかを考えるよりも、吃音に陥りやすい気質を親から受け継ぐことや、吃音になりやすい環境のもとでいかにその影響を受けるかという視点から考える方が現実的だと思います。
 ちなみに私の場合は、親戚縁者を私の知る限り調べても吃音者はひとりもいません。私が吃音になった間接的な要因(話すことへのプレッシャー)を考えますと、

・父親が「○○さんの話し方はじょうずだね」などと、話法に関心をもっていた。
・小学生の私は同年齢の女子が早口で話す様子に接し、自分の話す速さにひけ目を感じた。(一般に男子は女子より言語発達は遅れていておかしくはないのですが、自分では変と感じていたところがありました。)
・授業参観の時、勢い良く答えたのですが、たまたまどもってしまって笑われたように感じた。
・話をすることに神経質になってきた。自分は他人とは違っているのだという妙な意識を持ち始めた。この気持が思春期に持ち越された。

 こんなことですが、これらもあくまで吃音に至らせると考えられる間接的な要因であって、直接の原因とはいえません。原因がわからなくても間接的な要因が重なれば吃音症状がでてくることは明らかです。話し方を事細かに指摘してケチをつけていくことで、人為的に吃音にさせることも可能です。
 親が吃音の場合、子供がその呼吸のとり方や微妙な吃音心理を鋭く察知して影響を受けることもあり得ます。一方、どちらかの配偶者が吃音であるため、その影響を受けて夫または妻が吃音になったということは聞いたことがありません。それは結婚年齢にまで達していると、言語発達が確立されているので身近な吃音者の発語の影響を受けないからでしょう。

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Q.19
江田さんはどのようにして吃音(どもり)を治していったのですか。誰かに指導を受けたのですか。

A.私は小学4年生頃と高校1年生の時、東京にあるスピーチクリニックに通いました。そこでは腹式呼吸を中心とした発語練習をしました。一連のレッスンを通して、力まずに話をするイメージはつかむことはできたと思います。
 でも、話すことの心理的圧迫感はそのまま残っていました。社会に出てからは業務で電話をすること、さらに人前でスピーチをすることなど、話をしなければならない場面が増えてきましたので、その都度、自分で試行錯誤を繰り返しました。吃音のことを知らない方に私から会話練習(ロールプレイ)をお願いしたこともあります。個人的なスピーチカウンセリングを願っていましたが、そのような専門の方との出会いはありませんでしたので、結果として自分で治したということでしょうか・・・。
 吃音がなくなってから、更に人前でのスピーチや司会の専門トレーニングも受けました。
 今、自分の吃音改善の過程を振り返りますと、もし私の話し方、吃音心理をある程度長期に渡ってカウンセリングしてくれる人がいてくれたら、もっと改善がスムーズに進んでいただろうと思っています。私の通ったスピーチクリニックではグループレッスンでしたので、私の話し方のクセや発語心理までは共有していただけませんでした。
 この私体験が、電話でのカウンセリング&レッスンをさせていただいている重要な動機となっています。

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Q.20
電話だけのレッスンで吃音(どもり)は改善されるのですか。

A. 直接ご本人とお会いできれば一番良いかと思いますが、電話だけでも十分効果的なスピーチ・レッスンが可能です。また、電話は交通費・時間の節約にもなります。
 吃音の改善をどのように電話でさせていただいているかを申しますと、

(1)楽な話し方を体験していただく。
 不適切な息継ぎ、力んだ発語、不安定な早口などの不自然な話し方を修正し、発語予期不安のとらわれ意識を弱めることを、レッスンでの楽な話し方を通して体で覚えていただきます。ご自分では気付かなかったこと、また一人よがりで間違って受けとめていたことなどがレッスンの中で明確にされ、ご自分の話し方を客観的にとらえられるようになります。
 これはひとりだけの練習ではなかなか体験できないことです。

(2)レッスンで学んだことを日常生活に活かしていく。
 電話カウンセリング&レッスンはレッスンのためのレッスンではありません。あくまで職場や学校などで、レッスンで学ばれたことをどれだけ活かし続けるかが改善のカギとなります。
 吃音改善は話し方の体質改善ともいえます。これは普段の何気ない会話の中で育まれるものです。「今は身内との会話だから特に話し方に注意しなくても大丈夫だ」と思って従来の雑な話し方をしていると、職場などでのイザという場で慌てるものです。「今はリラックスできるから話せる」「今は緊張するから話せない」という二つの世界の線引きを”発語心理の二極化”といえましょう。
 普段丁寧な話し方を意識していると、この心理の差が縮まっていくものです。そのために、家族や友人との会話をいかに丁寧にしていくかの認識を深めて実践し、レッスンの度ごとに実生活でどのように話しているかをリマインドさせていただきます。

(3)発語予期不安を感じながらも、話せる体験を重ねていく。
 「またことばが出てこないのではないか・・・。またどもってしまうのではないか・・・。」という発語予期不安は簡単に消え去るものではありません。
 しかし、日常生活で適切な話し方を習慣化していると、以前はこの不安感情に圧倒されてしまっていたにもかかわらず、緊張・不安の中でも話せる体験を持つことができるようになります。発語予期不安とレッスンで育んだ話し方で話そうとする意志の共存状態です。これは長く続くと思います。
 さらに進んだ段階は、正しく話す制御力が発語予期不安に勝り、言えないのではないかという不安感情が殆ど起こらなくなる状態です。「発語予期不安のかつての記憶は残っているが、感情はきれいさっぱりなくなっている」という、今の私の状態です。

(4)逆もどりを防ぐ。
 うまく話せる自信がついても、以前の不自然な話し方習慣への逆戻りを防ぐため、最低、月1回のレッスンをお勧めしています。

 お一人おひとり吃音事情は異なりますが、電話を通して(1)から(4)までの改善のステップを踏むことができます。
 電話だけでも吃音の改善の方向性はしっかりと把握できると思います。

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Q.21
小学生のための電話レッスンはどのようにすすめているのですか。また「ことばの教室」での吃音(どもり)改善について教えてください。

A. レッスン内容は、小学生用のテキスト(腹式呼吸、発声、文章朗読、会話ロールプレイなど)を使用し、各自の状況に合わせて録音した練習用テープを自宅で利用していただいています。俳句も活用し、五・七・五のリズムに乗せた楽な発語練習も始めています。
 具体的な目標は、学校での教科書朗読、発表などで、それぞれ自分なりに納得のいく成功体験をしてもらうことです。
 
 また、「ことばの教室」についてですが、学校の担当の先生方のご努力に敬意を表します。
 私の次女は幼児期より難聴気味だったので、言語発達が少し遅れていました。ことばの教室の担当の先生には親身になって関わっていただき、心より感謝しております。
 吃音の場合、小学校低学年であれば、ことばの教室の先生にお話しすることで、お子さんとの関わり方についての何らかの良きアドバイスをいただけるのではないでしょうか。幼少期は吃音といっても心理的には仮性吃音の領域であることが見受けられますので、直接話し方の改善まではタッチしなくても良いように思います。
Q.2をご覧下さい
 けれど、5〜6年となりますと、吃音体験は心理的な打撃を深め、大変不安を覚え、仮性から真性吃音になる時期でもあります。私も5年生(11歳)の時は真性吃音者でした。真性吃音では、心理的気後れ意識のため、自分で正しく言おうとしてもどうしてもことばが出てきません。11歳の子どもであっても、吃音心理は大人と全く同じです。周りの人々の反応が気になり、クラスの子たちの早口に合わせようとして、ますます無理な発語へと自分を追いやってしまいます。
 このような吃音症状の子どもひとりひとりのケアーをすることに限界をお感じになっておられることばの教室の先生方も少なくないと思います。
 そのような訳で、小学5〜6年生という大切な時期の電話でのレッスンは、私にとって大切な課題と受けとめています。
  
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Q.22
「ありがとうございます」の「あ」とか、「お世話さまです」の「お」などでつまってしまいます。楽に言えるためのアドバイスをください。

A. 引っかかりやすいフレーズの例を挙げてみますと、
  「
電話をいただき、りがとうございます。」
  「毎度
世話さまです。」
  「ご返事を
願いたします。」
  「何か
ことづけがございますか。」

 吃音心理をお持ちの方は、上のようなフレーズを言う時、母音(
赤字)の前で止めようとしたり、息継ぎをしてしまう傾向にあります。
 
 母音(あいうえお)が言い難い理由を考えますと、
(1)本来母音は肺からの空気が声帯を震わすだけで発声する自然音です。誰でも間違いなく発声できる筈ですが、会話の流れでは喉に力がはいりがちなので、逆に発語は難しくなります。
 私の姓は江田(えだ)ですが、この「え」を出すために、喉に力を入れないようにすることは頭ではわかっていても、実際は大変難しいことでした。
(2)「ありがとうございます」「お世話さまです」「お願いいたします」などは、決まりフレーズなので、聞く相手も先がわかっていると思ったり、決まり文句でひっかかったら抜け道(ことばの言い替え)がないという不安が過ぎるものです。そのため、早く切り抜けようとする意識が働きますので、力みが入ってしまったり、早口になってもつれてしまうことになります。

 これらの要因が重なり、実際に支障をきたす経験をすると、「またこのことばは言えないのではないか」という吃音心理の悪循環にはまってしまうものです。

 楽に言えるための方法をご参考までに申し上げます。
(1)母音を前の音に丸め込む(つなげる)。
 「毎度お世話さまです」でしたら、まいどの「ど」の裏にある母音「オ」をそのまま伸ばして、お世話さまの「お」とつなげてしまいます。こうするとひとつの流れになりますので、とても楽な発語となります。
(2)「おはようございます」だけのような、前に何もことばがない場合は、「お」の前に自然音の「エ」を添えます。(これは「あいうえお」の「え」ではありません。)この「エ」は肺からの空気が声帯を震わすことばになる前の自然音ですので、力みがあると出来ません。
 反対に言うなら、ことばになる前の「エ」を始めの音に添えることができれば、すでに力みがとれている状態に入っていますので、どのような出だしのことばでも楽に発語できるといえます。
(3)母音を2つ並べる。
 「ありがとうございます」でしたら、「あありがとうございます」のように「あ」を2つ並べて話すように意識します。母音ですから2つ並べても少々長めの発音になる程度で、聞いていてさほど違和感がありません。母音を2つ並べる発音により、ブロック状態が緩和され、滑り出しが良くなります。
(4)出だしの母音を発音しない。
 「お世話さまです」でしたら、初めの「お」を完全(または殆ど)にとってしまいます。感覚として「○世話です」として、実際には発音しなくても「お」が入る間をいれておきます。聞く側には「お世話さまです」として伝わるものです。「おはようございます」にしても同様です。 
 普段の会話の中で意識しつつ、役者になりきって使ってみてください。

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Q.23 
吃音(どもり)を治そうという努力は無駄のように思うのですが。

A. おそらくあなたがそのようにお考えになるには、それなりの理由がおありと思います。今まで葛藤しつつ、散々努力してこられたことでしょう。また、他の吃音体験者の「吃音は治らない」という考えをどこかでお聞きになったのかもしれません。また、具体的にどのように改善していけば良いのか具体的手段を思い描けないのかもしれません。
 いずれにせよ、吃音の受けとめ方はその人の人生観につながるように思います。ちょっと宗教的になりますが、「ニーバーの祈り」という有名な祈りの詩があります。

      
       ニーバーの祈り
       神よ、変えることのできるものについて、
       それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
       変えることのできないものについては、
       それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。
       そして、
       変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
       識別する知恵を与えたまえ。
                   ラインホールド・ニーバー 
(大木英夫 訳)

       
O God, give us
        serenity to accept what cannot be changed,
        courage to change what should be changed,
        and wisdom to distinguish the one from the other.
                                    Reinhold Niebuhr


 私はこの祈りの詩を、吃音真っ最中の20代初めに接しました。そして自分の吃音という精神的負担を考え、よくあてはめてみたものです。

        
神よ、吃音が治るものなら、
        変えるだけの勇気を与えたまえ。
        変えることのできないものなら、
        吃音を受けいれる冷静さを与えたまえ。
        そして、
        吃音を変える(治す)ことができるのか、できないのか、
        識別する知恵を与えたまえ。


 まあ、こんな具合になります。
 結果として、あれだけの強度な発語不安という爆弾をかかえての状態から、自分の吃音を認めつつも徐々に自信をつけていき、完全に吃音心理から脱却している今の自分がある事実をみますと、吃音の改善のプロセスがあると言わざるを得ません。

 吃音はいったい改善できるのか、できないのか・・・とあなたが思う時、短期間では一気にできなくても、ちょっとした意識の持ち方と体験の積み重ねにより、更に自由な自己表現に向けての肯定的姿勢が深められる中で、話し方が改善に向かうということを知っていただければと思います。
 「それは江田さんだけにあてはまり、私には当てはまりませんよ」とお考えでしたら・・・「神よ、識別する力を与えたまえ・・・」。

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Q.24
私は人前で話そうとすると緊張します。吃音(どもり)が改善されると緊張しなくなるのでしょうか。

A. 問題となるのは、何に対して緊張するのかという緊張の質だと思います。吃音意識の核となるのは「不得手なことば(単語)がその場で上手く言えるか言えないか」という発語予期不安です。以前上手く言えなかった、やっとの思いでことばが出た・・という苦い体験が感情となって浮かび上がり、また今度も・・・という不安のため緊張感が増幅され、舌や喉の力み、横隔膜の緊縮などの体の反応が生じてきます。
 吃音の改善とは、緊張する中でも発語をコントロールできるようになることです。すなわち、過去上手く言えなかったという記憶からくる不安、焦りから生じている緊張の中でも、確実な発語ができるようになることです。
 
 吃音が改善されてくると、様々な場面での対応の余裕が少しずつ出てくるものです。会議での発言、研修会でのグループ発表、PTAでの自己紹介、会社の朝礼など、以前は完全に気後れしてしまったのが、言い換えなしに話せるという自信が生まれてきます。
 しかし、さらに数百人の会衆の前での司会などとなりますと、単にことばを発するということだけでなく、いかに上手くプログラムや話を進めていくかという話す内容の質が問われてきます。発語不安がなくても当然緊張するものです。この緊張は健全なものと言えましょう。
 吃音意識をお持ちの方々の中で、話すことの理想化したイメージを持たれる方が以外と多くおられます。
 人前でそれなりの話しをしていくには、緊張があって当然だと思います。
 
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Q.25
江田さんは、過去の吃音(どもり)意識が戻ってくることの不安はないのですか。

A.
もし私が話し方に全く注意を払うことなく雑な話し方を続け、ある時、急に改まった場で話をしなければならなくなったというようなことがあれば、過去の吃音意識に再び捕らわれて、発語不安に陥ってしまうということが起こるかもしれません。
 私自身、ややもすればどもる傾向があると知っていますので、話し方には注意を払っています。
 たとえことばが乱れたとしても、直ぐに正しい話し方へとコントロールすることができますので、吃音意識に捕らわれる不安は全くありません。

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Q.26
吃音(どもり)は「自然に」治るものなのでしょうか。

A.「吃音が治る」といいましても、どの程度のものなのか、その受けとめ方は人によってさまざまです。多分あなたのお考えの「治る」とは、「日常生活でどもらなくなる」ということだと思います。
 私の受けとめている「治る」とは、「どのような外的刺激(緊張)のある中でも確実に発語できるようになっていること」です。リラックスしている時はどんなにひっかかりなく話せても、電話応対など、外的刺激の強い特定の場面でことばがつまるとなりますと、その人は吃音意識にとらわれているということになります。

 学生の時は吃音を意識せずにやっていけたのが、仕事に就いてからことばがつかえてしまったりする場合のように、吃音が治ったと思っていても、それが限られた環境のもとであって、環境が変わることによって吃音意識が浮上してくることがあります。
 更に管理職になり、朝礼、会議、司会、部下の指導など、指導的立場でのコミュニケーションが要求される時、話すことの不安が出てきて吃音意識がはっきり表れてくることもあります。
 このように、ライフステージは変化し、話すことの社会的要求は高くなります。この要求に応えていくためには、どんな場面でも確実に話せるという確かな発語感覚を養っていく必要があります。
 こう考えますと、幼少時の吃音は除き、自然の成り行きのままに治ることを期待するのは無理があるように思います。改善に向けての何らかの方向性が必要です。

 「私はどもっても全く気にしません」という境地を拓いておられる方は、ある意味で治っている(吃音を超越している)と言えます。この道に徹することも立派な生き方だと思います。
 

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Q.27
レッスンの時は上手く話せるのですが、職場での緊張する場だとなかなか上手くいきません。(受講生より)               
A. レッスンでは次の2つの改善ステップがあります。

ステップ1: レッスンで100%納得のいく発語ができるようになること。
 
 レッスンを重ねていくと、腹式呼吸の息継ぎ感覚が養われ、滑らかに話せるようになっていくものです。また、話す相手(江田)とのリレーションがついてきますから、緊張感や不自然な力みが取れてきて、無理のない話し方で話せるようになります。
 しかし、慣れだけで話していると、レッスンのためのレッスンで終わってしまう落とし穴があります。レッスンで楽に話している時、もう一人のあなたがそばにいて、「ああ、こんな調子でいけばいいのだな」などと会話をすることをお勧めします。ピアニストがピアノを演奏している時、自分を少し離れて自分の演奏を聴いているような感覚です。
 レッスンは自分の話し方を客観視できる力を養う場でもあります。

ステップ2: レッスンでの発語感覚を日常生活の場に刷り込んでいくこと。
 
 吃音意識をもっていると、「ここでは上手く話せる。あの場面では話せない。」というように、予め発語心理を区分けしてしまうものです。これが吃音改善の大きな障害であるのですが、この壁を崩していくことに日頃意識を働かせていけば、さまざまな場面で発語のコントロールができるようになると思います。
 レッスンの目的はレッスン上手になることではなく、外的刺激のある中で、ことばの言い換えなしに確実に話していける経験を重ねていくことにあります。
 (受講生の)あなたにぜひ次のことを心がけていただきたいと思います。

■家族や友人との会話で出だしの音を伸ばす、語尾を伸ばすことをさりげなく実践して、ひっかからない話し方の感覚を時折確認してください。
 話に夢中になるといつの間にか胸で息をしていることがあります。息継ぎにも注意していただきたいです。

■言葉の言い換えをしないようにする。
言い換えをしていると発語の抜け道に頼るようになり、確実な発語感覚を養うことを妨げてしまいます。レッスンを受けている限り、言い換えをしたくなったら元のことばを確実に話す実践の機会としていただきたいです。

■職場で業務連絡などする時に、自分の話し方に相手がどのように反応しているかを確かめてください。
 自分で納得のいく話し方をしていて、相手が自然に話を聞いているようでしたら、「この話し方でいいのだな」と自分にOKを言い聞かせてください。自分が話しているとき、ちょっと距離を置いて自分(話し方)をみていく客観性は吃音改善の最終段階に不可欠と思います。

■かすり傷を怖れず、話す場面にどんどんチャレンジしていってください。
 レッスンを受けていないのであれば、思うように話せない体験はマイナスの体験として心の傷となっていくことがあるかも知れません。しかし、あなたはレッスンを受けておられるのですから、自分の期待通りに話せないことがあっても、すべて改善につながるプラスの材料となり、心の傷とはならないものです。私の吃音改善のプロセスをふり返りますと、社会的要求に応じることができるようにその都度挑戦を受けてきたことにあると思います。話すことの真の自信は外的刺激(緊張)のある中で育まれるものです。
 いつも上手く話さなければならないという「お話し完全主義」を捨てて、かすり傷を怖れず、話す機会をどんどん利用することをお勧めします。

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Q.28
レッスンを受けていて、吃音(どもり)改善に適した環境とそうでない環境とがあるのでしょうか。

A.吃音改善に適した環境、不適切な環境というのは受け止め方に個人差があり、良し悪しは申し上げられませんが、今までレッスンをさせていただいた経験の中で、あえて不適切と思われる環境を申し上げますと・・・

■あまりにも話すことのストレスが加わる場合
 レッスン上手で終わらせないためにも、ある程度の緊張(ストレス)のかかる状況下でのお話し体験を重ねていただきたいのですが、サービス業での電話対応、接客業務などの手加減のない現場で、吃音意識を持ったまま一日中無理な発語をし続けますと、レッスンでの発語感覚を実践していく余裕がなくなってしまいます。ある受講生の場合ですが、限度を越えたストレスのもとで不適切な発語がそのまま定着してしまい、改善が遅々として進みませんでした。
 けれど、ストレスを感じるのは個人差がありますので、Aさんにとってはストレスが強すぎて潰されてしまう場合でも、Bさんにとっては緊張下で話す良い実践の場ということもあります。どの環境(仕事)が良いか悪いかの画一的な基準はないようです。

■他者との会話があまりにも少ない場合
 一人だけの生活で他人と話す機会が少ない場合、話すことの実践が少ないのでレッスンを受けていてもなかなか自信がつきにくいものです。この場合は努めて人と話す機会を自ら捜していく姿勢が求められます。 

 吃音改善のための理想的な環境を求めるよりも、今ある環境を上手く利用していくことが得策と思います。家族との会話、アルバイト先での業務伝達、PTAの会合・・・何でも積極的に利用していきたいものです。
   

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Q.29
何回ぐらいレッスンを受けると吃音(どもり)が改善されるのですか。

A.これは「英会話学校のレッスンに何回出たらペラペラになりますか?」といった類と同じで、答えようのない質問と言えましょう。
 レッスンは治療行為ではなく、その目的は、適切な話し方を習慣化することによって、緊張する中でも確実に自分の言わんとすることばを出せるようになることにあります。受講生はちょうど料理人のようなもので、レッスンで提供される安定した話し方という素材を、それぞれが自分に合うように調理していくのです。
 受講生が「これだな!」と確かな話し方の方向性を感じ取っていくのは、個人によって異なりますが、5〜10回目位からでしょうか・・・。

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Q.30

吃音(どもり)を治そうとすると、かえって話すことに神経質になってしまうのですが。(受講生より)  

A. おっしゃる通りだと思います。吃音を治そうとする意識ですと、「こうあるべき」という基準を作り、それに到達しようとするのですが、ちょっとしたことでも「またどもった」「まだ改善されていない」というマイナスの意識が働くものです。神経質になる背後には、失敗することの恐れがあると思います。
 
 けれど、安定した話し方習慣、ことばがひっかかった時の立ち直り習慣を身につけていく姿勢は、現在の吃音状態を肯定し、健全で前向きなエネルギーを生み出すものです。神経質になることとは別です。
 例えば、英会話をなんとか自分のものにしたいと思えば、英語のテープ・CDを聞き、努力なさるでしょう。それは健全なエネルギーで神経質になることではありません。

 吃音を治そうとするのではなく、発語不安感情をそのまま受けいれつつ、安定した話し方習慣、ことばがひっかかった時、瞬時に調整していく立ち直り習慣を身につけていくという姿勢に変えてみてください。

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Q.31

一般の人は腹式呼吸など知らなくてもちゃんと話しているのに、なぜ腹式呼吸を指導するのですか。   

A.確かに、放送関係などの特別な立場の人でない限り、腹式呼吸を意識して話す人など殆どいないと思います。一般には幼児期に耳から聞いたことばをそのまま発語して学習しているわけで、腹式呼吸など知らなくてもそれぞれのやり方で話しています。

 けれど、ひとたび吃音意識を持った場合、安定した息継ぎ(呼吸法)の習慣なしには、ある場面で言えるか言えないかという駆け引きの世界から抜け出ることは容易ではありません。

 話し方をコントロールできるようになるためには、腹式呼吸による横隔膜の安定した動きによる発語プロセスがどのような感じなのかを、体で覚えていくことが大切です。胸による浅い呼吸の息継ぎは、軽い「しゃっくり状態」を助長してしまい、ことばが短く区切れがちとなります。
 
 安定した話し方習慣の確立のためには、どうしても自然な腹式呼吸の習慣付けが必要と受け止めていますので、腹式呼吸を土台とした息継ぎと発語という、一連の自然な流れに向けての指導をさせていただいています。
 一方、腹式呼吸ができれば吃音はすべて解消という簡単な構図は成り立ちません。あくまで自然な発語プロセスの一部です。

 私自身、別に意識しなくても腹式呼吸で話しています。習慣化すると、ことさら意識しなくても当たり前のこととして浸みついてくるものです。

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Q.32
職場ではあまりどもらないのですが、家族と話す時はなぜかひっかかってしまいます。(受講生より)   

A.恐らく職場では話し方に気をつけているので吃音が比較的出にくく、家族との会話では感情がそのまま前面に出てしまい、話し方には意識を払わないからだと思います。
 これとは反対に、家族との会話はスムーズなのに、職場ではつまるという場合もあります。(こちらの方が多いですが・・・)

 いずれにせよ、吃音改善で大切なことは、家族(両親)、友人などとの身近な人との会話を雑にしないことです。
 自分の気持ちを抵抗なく表せる場こそ、その場の勢いでべらべら話すことをしないで、自分の話し方を距離をもって見るような感覚を持って、後味のよい話し方習慣を目指していきたいものです。

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Q.33
スピーチをする時、原稿を作るのとメモ程度で話すのと、どちらが良いのでしょうか。(受講生より)   

A.スピーチといってもさまざまな場面があり、原稿を作るかメモ程度で良いかはその場の状況によると思います。
 
 職場での会議や朝礼での打ち合わせ・伝達はメモ程度でよろしいと思います。けれど、結婚式でのスピーチ・司会、研究発表などのプリゼンテーション、講演会の司会、公の会合での挨拶スピーチなどでは、あらかじめ原稿を作ることをお勧めします。PTAでの挨拶や自己紹介なども、お話しに不安があれば原稿を作って話すことをお勧めします。
 
 吃音意識がありますと、あらかじめ決められた(原稿通りの)フレーズを言うことに抵抗を感じ、原稿など作らずに、とにかくその場で何とか言い換えながら逃げ切ろう(?)と考えるものです。まあ、それも対処法のひとつと言えましょうが、緊張の中でひとつ言い換えると、続いて次の言い換えのことばを捜し始め、果ては自分で何を言っているのか分からなくなる・・・ましてや聴衆には言わんとするメッセージが届かなくなり、雲に包まれる・・・そんな具合になってしまうのではないでしょうか。

 公の場でのスピーチになればなるほど、ことばの精度が求められますので、原稿作成は不可欠だと思います。原稿作成は手間がかかりますが、その努力は報われるものです。
 準備段階として、自分で作った文章を声を出して読み、引っかかりやすい音は前の音につなげるなどのマークをして、読み上げるというより聴衆に語りかけるイメージが描けるまでリハーサルしてください。
 ちなみに私は講演会やコンサートでの司会をさせていただいておりますが、毎回必ず原稿を練ります。(紅白歌合戦の司会台本では、どの場面で何を話すかが事細かに書かれてあるのと同じです。)それにより話す内容の明確な枠組みができます。その中に当日の場でしか語れないフレーズ(ちょっとしたユーモア)を入れることができます。
 
 以前ある婦人が、・・・その方は吃音ではありませんがスピーチに苦手意識をお持ちでした・・・、会合でノートに書いた原稿を見ながら緊張気味に発表しておられました。けれど的を得た表現と誠実に語る態度は今も私の記憶に残っています。
 スピーチは苦手と思っておられる方ほど、良いスピーチをするものです。反対にスピーチが得意と思っている人ほど、原稿もなく行き当たりばったりの冗漫なことばで長々と話し、聴衆に我慢を強いて受容させるものです。

 原稿をもとにしたスピーチは話の質を高めます。そして、言い換えをして話すこととは比べ物にならない達成感、満足感そして話すことの自信をもたらすものです。ぜひトライしてください。

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Q.34
会社の電話で「お電話ありがとうございます。」だけが言えなくなってきました。日常の会話はすべて問題はないのですが、私も吃音(どもり)なのでしょうか?  

A.日常の会話や人々の前でのスピーチなどでは全く問題がなく、「お電話ありがとうございます。」だけが言えないということですが、自分が普段話すことにどのような意識を持っているかを明らかにしていく必要があると思います。

 電話などで特定のことばだけが言えないとおっしゃる方の背景を伺ってみますと、次のようなことが部分的にあてはまることが多いです。
 
 ◎過去にことばの詰まり経験があり、どこかにその不安感がある。
 ◎日常会話で早口で終わらせる傾向がある。
 ◎自分が話しているのを聞かれるのが嫌い。
 ◎他の人の話し方と自分の話し方とを比べることがある。上手く話さなければいけないと思って
   いる。
 ◎言い難いことばがあると、瞬間的に他のことばに言い換えて話すことがある。

 話すことに妙なこだわりが生じ意識するあまり、実際にことばが出にくくなっているのならば、吃音の入り口に立っているように思います。

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Q.35
自分の吃音(どもり)が子供にうつってしまうのではと思い心配です。(受講生より)  

A.親が吃音者だと、その子供が吃音になる確率は一般に比べ高くなることは否めないと思います。電話カウンセリングの受講生の中には、父、母のどちらか、また祖父母が吃音者である方が、多くはありませんがいらっしゃいます。
 
 出だしに胸呼吸で不自然に息を吸い込む、息を吸い込んで瞬時止めてから話し出す、「そ、そ、そ、それで・・・」などの連発、「か」「た」などの硬い発語、不自然な早口など、子供は親の不自然な息継ぎと音のつながりの話し方を敏感にキャッチするものです。

 一方、吃音意識や発語不安は話し手(親)の内面の世界ですので、自然な話し方をしている限り、深い吃音意識があっても子供には影響を及ぼすことはないと思います。

 私には現在24歳と22歳の娘がおりますが、二人がまだ小学生の頃、自分の吃音(意識)がうつらないかと心配したことがあります。当時の私は吃音意識は強くありましたが、家庭では安定した話し方を努めていました。娘は演劇部にも入って人前で物怖じせず話しており、父親が吃音(意識)をもっていることなど、全くわからないで育ちました。インターネットで吃音のスピーチ指導をさせていただくようになって初めて、「お父さん、吃音だったの?」と訊かれる程です。

 吃音意識が深くあっても、家族との会話で調節して話している限り、全く問題ないと思います。

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Q.36
吃音(どもり)は治療するものですか?  

A.病気やケガなどを手当てして治すことを「治療」といいますが、吃音の場合は、声が出ないなど発声器官に問題があったり、独りだけでもことばが出ないなどということはまずありません。日常会話でことばがからまったり、電話や人前でのスピーチで緊張して発語し難くなったりするのが吃音の性質です。

 安定した話し方がどのようなものかを感覚的にとらえ、話し方の調節習慣を実践的に身につけていくことが吃音改善の道です。

 吃音をお持ちの方が、受身ではなく能動的に自ら新たな習慣を身につけていくことですので、「吃音を治療する」という捉え方は不適切だと思います。

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Q.37

手話をしながら話す時はスルスルとことばが出て全くどもりません。なぜでしょうか。
  

A.手話をしながら話す時は、手の動きがことばとなっていますので、口からの発語は補足的な感覚となります。たとえことばが詰まっても手話はそのまま続けられるという安心感がありますので、自然にことばが出るものです。
 ひとりだけでの朗読では詰まってしまうのに、他の人と一緒に声を出して読むとスラスラ言えることと同じ心理です。
 また、手話の話し方は日常の話し方と異なり、ゆるやかなスピードで口の形をはっきりさせますので、このことも言いやすくしていると思います。

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